考えてみよう

銀河の中心部には巨大なブラックホールが存在すると考えられています。そうなると必然的に生じるのが「銀河が先か、ブラックホールが先か」という疑問

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「銀河が先か、ブラックホールが先か」というのは、天文学における難しい問題の一つです。実は、この問題にはまだ確かな答えが見つかっていません。銀河とブラックホールは、お互いに影響しあって成長してきたと考えられていますが、どちらが先に誕生したかは分かっていません。

最近の観測では、初期の小さな銀河に、超大質量のブラックホールが発見されました。これは、銀河の大きさに比べてブラックホールが大きすぎるということで、銀河の中心にあるブラックホールの質量と、銀河の形を決める部分の質量が比例するという法則に反しています。この法則は、銀河とブラックホールが一緒に成長してきたことを示していると考えられています。

この発見は、ブラックホールの方が先にできた可能性を示唆していますが、それだけでは結論を出すことはできません。ブラックホールがない、あるいは検出されていない銀河もありますからね。ブラックホールと銀河の関係は、まだまだ謎が多いです。

これまでは銀河が形成された後にブラックホールが誕生したというのが定説でした。

しかし、ソルボンヌ大学のJoseph Silk氏などの研究チームは、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」による初期宇宙の観測データとシミュレーション結果を組み合わせた結果、銀河とブラックホールはほぼ同時に誕生し、ブラックホールが銀河の星形成を加速したとする研究結果を発表しました。これはウェッブ宇宙望遠鏡の観測で示された初期の銀河が予想より多く存在する可能性を裏付ける成果です。

ソルボンヌ大学のJoseph Silk氏などの研究チームはこの謎に挑戦するために、ウェッブ宇宙望遠鏡で観測された初期の宇宙に存在する銀河に関する観測データと、初期の宇宙における物質の挙動のシミュレーションを組み合わせ、初期の宇宙で何が起きているのかを調べました。その結果、これまでの定説に反してブラックホールと銀河はほぼ同時期に形成されただけでなく、お互いの進化に影響を及ぼしあっているという意外な結果が得られました。つまり、冒頭の質問の回答は「銀河もブラックホールも同時である」ということになります。

Silk氏らの研究結果によれば、初期の宇宙における銀河とブラックホールの共進化は次の通りです。まず、宇宙誕生から約3億年後という非常に初期段階の宇宙で巨大なガス雲が集合し、中心部は崩壊してブラックホールが、その周辺では恒星が誕生します。これが銀河の最初期の形態であるともいえます。

次に、ブラックホールは周りのガスを取り込むことでジェットのような激しい放射を開始します。この放射は周りのガス雲を押しのけて密度を高めるため、高密度の場所では活発に恒星が誕生するようになります。この段階ではブラックホールの活動が星形成を促す正のフィードバックが働いています。正のフィードバック時代は宇宙誕生から3~12億年後まで続いたと推定されます。

しかし、時代が下るにつれてガスは恒星の形成に消費されるか、あるいはブラックホールの放射によって銀河から離脱するため段々と枯渇します。中心部では相変わらずブラックホールの重力がガスを引き寄せることで活動が活発な状態が続くため、放射によるガスの離脱はますます進行して恒星の誕生に必要なガスも枯渇してしまいます。前段階とは異なり、この段階ではブラックホールの活動が星形成を阻害する負のフィードバックが働いていると言えます。負のフィードバック時代は宇宙誕生から12億年後から始まったと見られています。

「銀河が先かブラックホールが先か」長年の疑問に挑む新たな研究結果(sorae 宇宙へのポータルサイト) – Yahoo!ニュース

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